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ゲイであることを公表して活動している写真家、森栄喜さん。

恋人をメインに、自身や友人たちも取り込み、たわいない日常をスナップショットのアプローチで日記的に記録した写真集『intimacy』（ナナロク社、2013年）で、2014年、「写真界の芥川賞」と呼ばれる「第39回木村伊兵衛写真賞」を受賞してから４年。『Letter to My Son』と題する個展を、新宿にあるギャラリー「KEN NAKAHASHI」で開催する。

「KEN NAKAHASHI」での個展は、昨年、写真集『Family Regained』の刊行に合わせて開いた同名の展覧会以来、２度目となる。『Family Regained』では、友人や恋人、夫婦など40組の多様な「家族」を被写体とし、彼らの暮らす住居や庭先で、森さん自身もそこに入っていき、セルフタイマーを使って一緒に写真に収まった。何より印象的だったのは、すべての作品が、真っ赤なこと。これは、赤いフィルターを使ったことによるのだが、その強烈な「赤」という色に、さまざまな家族の姿を染め上げることで、「家族」の意味を問い直し、なくしてしまった何かを取り戻そうと試みる。意欲的かつ挑発的な写真集だ。

■『Family Regained』について、ハフポストで掲載されたインタビュー
「前編」　https://www.huffingtonpost.jp/2018/02/05/eiki-mori-family-regained_a_23353057/
「後編」　https://www.huffingtonpost.jp/2018/02/05/eiki-mori-family-regained2_a_23353037/

『Family Regained』から１年が経ち、「KEN NAKAHASHI」で２度目となる個展のタイトルは『Letter to My Son』。「息子への手紙」である。

本展に際し、森さんはこのように語っている。

「１秒にも満たない、長くてもたった数秒の、ひとつひとつの表情、仕草、小さな癖、声、足音、マッチが擦れる音、髪を揺らす風の音…。何かに駆り立てられるように、次々と切り替わり流れていく場面の中で、様々な断片がほんの一瞬、儚くきらめき、目の前にこぼれ落ち、消えながらも堆積していく。それは記憶が生まれたり、時とともに変容していったり、残っていくことに似ている。断片のひとつひとつが紡がれ、つながり合い、文字になり、言葉となり、手紙になる」

本展では、森さんが初めて撮影・編集のすべてを手がけた映像作品と、便箋と封筒と写真を組み合わせた７つの作品が初披露される。これらの作品は、森さんがニューヨーク留学時代に親しくしていたある人物との思い出が基になっているという。

個展『Letter to My Son』を本サイトで記事するにあたり、森さんから、以下のようなコメントをいただいた。

◆森栄喜さんのコメント◆
昨年、ニューヨーク留学時代にある友人と交わした会話をふと思い出し、老詩人と青年と留学生の３人の出会いから始まる物語が僕の中で生まれました。
すぐに昨年末、ギャラリー「KEN NAKAHASHI」で朗読パフォーマンスというかたちで発表しましたが、その後も、エッセイや詩、撮影を通して、物語の断片をひとつひとつ見つけながら紡いできました。その物語は、ほんの少し時間や時代がズレるからこそ、素直に伝えることができるような、ラブレターや遺書、日記のようなものでもあります。
今回展示する映像作品は、実は今月（2018年11月）に完成したばかりです。ズレがあまりなく少し恥ずかしいですが、会場で見てくれる方はもちろん、“未来の息子・娘たち”へも届く手紙になるといいなと思っています。

写真家・森栄喜さんの新たなる挑戦に、ぜひ、ふれて、感じてほしい。

森 栄喜

1976年、石川県金沢市生まれ。パーソンズ美術大学写真学科卒業。
2014年、写真集『intimacy』（ナナロク社、2013年）で第39回木村伊兵衛写真賞を受賞。
●http://www.eikimori.com