もう学校を卒業してしまった方には、キム・ヘジン『娘について』(亜紀書房)がおすすめです。介護士の初老の女性の目線から、娘と、娘の恋人、そして、かつて社会から尊敬されていた認知症の女性との関係を描きます。娘は、大学非常勤講師の不当解雇に反対して、大学に抗議し、仕事を失います。彼女を支えているのは、同性の恋人。そして、主人公は、幸せからわざと遠ざかっているような娘に怒りと諦めを感じながらも、自分が担当している認知症の女性に対しての不当な扱いに抗議して、介護施設と闘います。

私たちは、女として、男として、その間で揺れる存在として、被扶養家族として、世帯主として、会社員として、事業主として、無職として、ひきこもりとして、納税者として、生活保護受給者として、年金受給者として、恋愛している間も、仕事をしている間も、友達とご飯を食べているときも、ボーとしているときも、いつどんなときも社会的な存在です。

安心して好きな本を読んだり、好きな人と一緒に暮らせる社会を、みんなでつくっていきましょう。

キム・へジン『娘について』(亜紀書房)

■ティーヌ
レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、ノンセクシャル、アセクシャル など、セクシャル・マイノリティと呼ばれる人々が登場する小説を応援する会、読書サロンを主宰。月に1回、都内で読書会を開催。
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