日本が台湾を植民地統治していた時代に総督府として建てられた総統府の前には、臨時のステージ(実はこれは大きなトラックの荷台を開いたもの)が登場し、巨大スクリーンとスピーカーがしつらえられた。その前には丸テーブルが160卓、各卓に10脚、合計で1,600脚の赤いプラスチック製のスツールが並べられ、各テーブルには次々と台湾風の中華料理が運ばれてくる。

 ステージでは同性婚を応援してきた歌手による歌、ドラァグクイーンやゴーゴーボーイのパフォーマンスが披露された。伴侶盟のリーダー、許秀雯さん、簡至潔さんカップルは、この10年の運動を振り返って、晴れがましくご挨拶。走りきった爽快感で満ちあふれ、まばゆいばかりの勇姿を見せてくれた。祁家威氏もこの日、午後、開催された宜蘭県でのプライドパレードを終えて、慌ただしく台北に舞い戻り、合同披露宴では筆者と同じテーブルに座った。国会に同性婚を法制化するための法案を4度にわたって提出し、最後は行政院が提出した司法院釈字第748号解釈施行法の採択に尽力した政治部門の功労者、尤美女立法委員など、同性婚法制化を推進した国会議員も顔を見せた。

 夜のとばりが降りた頃、昨日、結婚した新婚同性カップル20組が次々と入場し、総統府前の盛り上がりはクライマックスに達した。ウェディングドレスやタキシード、着ぐるみなど、思い思いの衣装に身を包むカップルが、会場の人たちに見守られながらレッドカーペットを歩き、指輪を交換して愛を誓った。

祁家威氏(左)、尤美女立法委員(中)。「同婚宴」にて。

 総統府前という場所は、日本で言えば国会議事堂前、霞ヶ関といった台湾政治の心臓部である。敢えてこの場所で「同婚宴」を催すことに重大な意義がある。折しも今年で落成からちょうど100周年を迎えた総統府の塔に見下ろされた広場が、ようやく結婚というスタートラインに就くことができるようになったLGBTを祝福する熱気に包まれたさまは、壮観の一言に尽きた。台湾同志(*1)が平等なこの国の主人公になったことが実感された。同性婚の実現というテーマが、まさに政治的な課題であり、LGBTというマイノリティがそれをやり遂げたことを、政治の中心から台湾中にアピールする、そういう象徴的な意味が込められていたのである。

[*1]中国語の「同志」は現在、性的マイノリティの総称、LGBTとほぼ同義の言葉として使われている。

1 2 3 4 5
< >

バックナンバー