17時。そろそろ日が傾き始めたころに、パレードは駅前広場を出発した。フロートは2台で、先頭を飾るのは「レインボージーザス」。当事者とアライからなるキリスト教グループだ。スピーカーから流れるCCM(コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック)に合わせて踊り、時々「イエス!」「主よ!」と合いの手を入れながら、韓国のキリスト教の抱える問題点を自虐ネタにしたラップを挟む。クリスチャンではない参加者は少し戸惑いの表情を浮かべつつも、パレードが進むにつれ盛り上がっていった。

大通りを進む仁川クィアパレード(画像:筆者)

沿道でヘイトスピーチの書かれた横断幕を持ちつつ「主よ!」と叫ぶ集団に向かって、「こっちこそが正しい」とレインボーフラッグを掲げながら「主よ!」と叫ぶフロートと参加者。キリスト教が根付いているとは言い難い日本で生まれ育った人には、少し理解が難しいかもしれないが、これほどのカウンターはないだろう。

大通りを進む仁川クィアパレード(画像:筆者)

駅前広場から真っすぐ延びた大通りに沿って北上し、2駅先で折り返す3キロほどのコースだった。途中でフロートの前に寝転がり妨害するなどのことはあったが、概ね問題なくパレードは終了した。

現在、韓国では20年を迎えたソウル、10年目の大邱(テグ)、そして済州(チェジュ)、全州(チョンジュ)、光州(クァンジュ)などでパレードが行われているが、どこも保守キリスト教や極右団体の激しい妨害、行政当局の対応の悪さと闘いつつ、やっとのことでパレードの開催にこぎつけているのが現状だ。9月21日に開催予定だった釜山のパレードも行政当局の妨害により開催を断念し、糾弾大会に変更せざるを得なくなった。

取材・文/植田祐介

■『仁川クィア・カルチャー・フェスティバル2019』
日時:2019年8月31日(土)
場所:仁川・富平(プピョン)駅前広場
参加者:約2,000人
テーマ:“무지개인천, 퀴어 있(잇)다”
「レインボー仁川、クィアがいる(つなぐ)」
*「いる」と「つなぐ」は同音異義語でダブルミーニング。

[関連動画]
https://www.youtube.com/watch?v=cumcEzVtNXo


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