10月最初の土曜日、大阪で行われた『RAINBOW FESTA! 2017』(以下、フェスタ)に行ってきました。今回はその参加録を書かせていただきます。

当日の関西地方は前日からの雨がまだ続いていて、どんよりとした雲が垂れ込め、雨が降ったり止んだりしていました。私は梅田駅から歩いて会場まで行きましたが、土曜日のお昼どきということで駅周辺は待ち合わせの人などがたくさんいました。とはいえ、さすがにこの辺ではまだレインボーカラーなどそれらしいものはなく、普段の梅田の街といった感じでした。

扇町公園の『RAINBOW FESTA! 2017』会場。

私がフェスタ会場の扇町公園に到着したのは正午少し前で、すでに始まっていたステージでは、ちょうどHello! Projectの楽曲をダンスカバーしているグループ「H-Pag!」さんたちがダンスパフォーマンスをしていました。雨を吹き飛ばす勢いの踊りに、とうとう天が味方したのか、程なくして雨が止みました。その後「平等結婚式」が始まり、お互いトランスジェンダーという東根歩夢さんと中川未悠さんのカップルが人前結婚式を執り行いました。さきほどのダンスパフォーマンスとは打って変わって厳かな雰囲気の中、三々九度。観衆も静まりかえって写真を撮ったり拍手をしたりで二人の門出を祝いました。この結婚式の間も雨が止んでいたので、観ている私も不思議に思いつつ、本当に良かったなと思いました。

雨を吹き飛ばすダンスでステージを盛り上げる「H-Pag!」。

「平等結婚式」と題されたステージ企画で人前結婚式を挙げる、東根歩夢さんと中川未悠さんのカップル。

会場内には40近いブースが出店していて、当事者団体のブースから一般企業、法律家団体などの関係団体、そして飲食ブースもありました。私はパレードを歩く前の腹ごしらえに、ヴィーガン料理のお店でカレーをオーダー。本当は一緒にビールも飲みたかったのですが、パレードのことも考えつつ我慢。カレーを堪能しました。京都のホテルのブースでは虹色クッキーやベーグルが売られ、とあるコンドームメーカーはスタッフと写真を撮ってくれた人に自社製エナジードリンクを配っていたり、アンケートを実施している研究者ブースがあったりと、それ以外にも一つ一つ手作り感のあるブースが並んでいました。みんな天気なんてどこ吹く風で、風船を配っているブースもパレードに向けてたくさん風船を作るので大忙し。だんだんパレードに向けて会場中央に人が集まり始めて色鮮やかな景色が広がり、眺めているだけでパレードの始まる楽しい雰囲気になってきました。

ヴィーガン料理ブースのカレー。

小雨まじりの中、いよいよパレード出発!

そしていよいよパレード開始です。また小雨が降ってきましたが、それもなんのその。パレードはフェスタ会場の扇町公園から出発して、関西テレビ社屋の脇から天神橋筋六丁目駅の交差点まで北上し、都島通を堂山町の交差点まで歩き、堂山地区をぐるりと回ってフェスタ会場に戻るというルートでした。いくつかの隊列に分かれていましたが、音楽が流れるフロートがないためか、お祭り騒ぎというよりも大阪の街をみんなで歩くイメージでした。

私は神戸と大阪から来たという女の子2人組と同じ列で歩きました。女の子のうちの1人が持っていた風船を途中で手放してしまい「もう帰りたい」と言い出したり。見知らぬオッサンが運転するクルマが駐車しようとして、パレードの列に幅寄せしてきて、誘導していた警察官が説明していたり。私たちの目の前を歩道から横入りしてきた男2人組がサングラスで完全武装していたかと思ったら、途中からサングラスを外してパレードを楽しんでいたり。そのうちに小雨も止んで晴れ間が見えてきて……。「大イベント!」という雰囲気というより、日常の風景に突然パレードが入りこんでハプニングが起きているという、そんな日常の延長感がありました。それもあって、パレード然としていない自由さ・穏やかさが感じられました。そういう日常感からなのか、それとも逆にパレードの非日常さのほうが際立っていたのか、沿道に偶然居合わせた方々からの声援などは、ほとんど確認できませんでした。

一緒に歩いた大阪の女の子は、今年の東京のパレードを原宿駅前の歩道橋から見物していたそうで、東京が面白そうだったから、大阪で友達を誘って歩いてみようと思ったそうです。今回の大阪での雰囲気を見ていて、大阪ならもっと大騒ぎしていてもおかしくないのにと残念がっていました。それを聞いて、私がさっき日常に入りこんだようだと思ったのは一方的な考えで、大阪の普段のテンションが生かされていたら、もっとお祭り騒ぎであってもおかしくないのかと考え直しました。一緒に歩いた女の子たちには、ぜひ海外のパレードを観に行ってほしいなと、そうしたらきっと楽しい旅の思い出になるだろうと伝えて、別れました。

JR線の高架下に差し掛かるパレードの隊列。

雨も上がり、少し空が明るくなってくるとカラフルな風船の色合いもだんだんと鮮やかに!

私は今回初めて大阪のフェスタとパレードに参加しましたが、当事者と思しき方でも遠巻きに見ているだけという方が結構いたように感じました。大阪の知人からも同じようなことを聞かされました。地元の当事者でフェスタやパレードに参加する方は少ないのではないかと、彼は話してくれました。それは地元で自分のセクシュアリティをオープンにすること自体に否定的だからだということです。これは大阪に限らずどこででも言えることだとは思うので、その考えはとても理解できます。しかし大阪ほどの大都市でも、オープンにすることをことさらネガティブに捉えざるを得ない状況があるのかと思うと、少々残念に思います。とはいえ東京も同じですが、オープンな人に対するクローズな人の眼差しが想像以上に厳しいなと驚きました。

さて話が脱線しましたが、今回のフェスタ来場者は公式HPの発表で4,700人、パレード参加者は760人だったそうです。地元の当事者がどう見ているのかわかりませんが、大阪に他所から多くの人が訪れている以上、地元以外の人が来て楽しむ側面もあると思いました。また、若い人が多かったと感じました。実際、パレードで私の後ろを歩いていた男の子たちは中国語を話しているように聞こえました。この視点で考えられるなら、大阪のパレードも外部から人がやって来るお祭りとしての要素を持ち得るのだと思えてなりませんでした。来年も大阪でのフェスタとパレードで、今年一緒に歩いたような若い女の子や男の子たちが、楽しんで歩いているのを見られたらいいなと思いました。

取材・文/梅川義也

■RAINBOW FESTA! 2017 関西レインボーパレード

日時:10月7日(土)
場所:扇町公園
参加者数(公式サイト):総動員数 4,700人(そのうちパレード760人)
主催:レインボーフェスタ! 実行委員会
公式サイト:http://www.rainbowfesta.org