――ビリーさんは、日本の「Outforce」の活動をどう見ていますか？
ビリー アメリカはエリアによってLGBTQへの寛容度がかなり違います。私の出身地、ユタ州ソルトレイクシティはとても保守的で、日本と良く似ています。LGBTQについては知っているけど、権利について進歩する必要はないと考えている人が多い。そうした状況の中で有効な方法は、LGBTQの人たちの姿が見えるようになり、怖がる必要がないということを人々が実感することです。私がゲイであるということで、人間としての価値が減るわけではありません。日本でこれから大事なのは、LGBTQが見えるようになり、対話することだと思っています。
――まさに、参加（show up）、対話（speak up）がポイントになってくるということですね。このような活動がビジネスにもたらすものとは、なんでしょうか。
新井 人は自分の経験や考え方に反することを、つい無視しがちです。しかしお客様のビジネスに貢献し、さらにスケールするうえで重要なのは、多様な意見をとりいれ、取捨選択をしながらビジネスを進めることにあります。今までだったら、強いリーダーシップが有効だったかもしれませんが、ビジネスは環境の変化が激しく、多様性と柔軟性が求められています。
松本 私たちのビジネスは年々成長しており、5年後、10年後、もっと伸ばしていこうという目標を持っていますが、誰かが「自分はこの会社に受け入れられていない」と感じていたら、自分の意見を言いたくても言えない状況になってしまいます。本当は必要な意見だったのに出なかったことによって、最終的にはビジネスの機会損失につながってしまいます。一人ひとりが自分の100%のパフォーマンスを出せる環境づくりは絶対に必要ですし、離職や転職防止にもつながります。私は、セールスフォースを社員にとっての第二の家、と呼べるような場所にしていきたいと考えています。
――TRPへ協賛を決めた経緯について、教えてください。
小川 個人的には5年くらい毎年参加していましたが、「Outforce」の存在を知り、社員で参加してみるのも面白いなと思いました。2018年のTRPに参加を呼びかけたところ、60名くらいの社員が参加してくれて、アクサ生命保険株式会社からもサポートをいただくことができました。実は「とりあえず行ってみよう」という社員が多かったんですが、「とても楽しかった」「知らないことを知れた」などポジティブなフィードバックがあったので、2019年は会社として参加できるといいねと盛り上がり、マーケティングのメンバーも関わってくれるようになりました。
20周年を目前に会社としての認知は定着しつつあり、弊社マーケティング部門の次のステップとして、ブランディングがテーマになっていました。LGBTQをはじめ、アースディ、サスティナビリティ、3.11東北復興、女性平等、障害をもった方へのサポートなど、年間を通じてさまざまなテーマに取り組んでいきたいと考えており、コアバリューをきちんと体現化する機会、会社としてきちんと向き合える場を求めていました。その一環としてTRPはちょうど良いタイミングだったと思います。
僕はいろいろな理由があってゲイであることをオープンにしていますが、実は、積極的な活動をするタイプではなかったんです。米国インディアナ州で同性愛に差別的な法案が通りそうになったとき、ノーと言ったのがCEOのマーク・ベニオフだったことを知って、オープンにして働くだけじゃなく、自分という存在によって何かが変わるかもしれないと感じて、セールスフォースに入りました。入社してまだ1年と少しですが、以前は個人参加だったのが、今度は会社として参加することになり、マーケティングも巻き込んで、もっと大きく変えていきたいなという気持ちになっている。劇的な変化です。すごくワクワクしています。
――確かに大きな変化ですね！ TRPのブース内容はどのようなものになりますか？
小川 今年のブースのテーマは LGBTQの祭典『Tokyo Rainbow Pride』にちなんで「お祭り」です！ 海外でも活躍する、著名な書道家・アーティストのMaaya Wakasugiさんを迎えて、LGBTQやPRIDEに関わる「書」を書いていただくライブパフォーマンスやボディペインティングを予定しているのでぜひブースに遊びに来てください！
そのほかにもボランティアメンバーが、私たちが行っている平等の取り組みについて紹介したり、私たちと一緒に働くことに興味がある人を対象に、採用に関する窓口も作る予定です。セールスフォースについて知ってもらえる機会になれば嬉しいです。
※Maaya Wakasugi様の来日は諸般の事情により、今回は見送りとなりましたが、また時期を改め、日本にお迎えできればと考えております。イベント当日は世界的に注目を集める花結い師 TAKAYA氏によるライブパフォーマンスを実施致します。
取材・文：五十嵐ゆり／撮影：山縣真矢
［本社］東京都千代田区 1999年3月設立、米国カリフォルニア州に本社をおく。2000年に日本法人である株式会社セールスフォース・ドットコム設立。クラウドベースの顧客管理・営業支援を提供する。
