■取り組み①「LGBT勉強会」

 1つ目が「LGBT勉強会」です。目的は、社内のアライ濃度を高めるために、LGBTに関する認知・理解の促進を図ること。こだわったポイントが2つありました。まずは「従来とは異なるアプローチ・理解促進」です。このために、東京レインボープライドの事務局の方にご協力いただいて、一緒にコンテンツを作らせていただきました。

 もう1つのこだわりは、「社員のLGBT支援に対する動機付け」です。JT社員として、なぜ多様化に取り組むのか。取り組む必要があるのか。そして一人の人間として、どうして多様性と向き合わなければいけないのか。ここの部分でしっかりと共感し、腹落ちしていただければ、理解促進が進むのではないか。そう考えたのです。


 「従来とは異なるアプローチ」ということで、弊社の課題を解決できるようなオリジナルのコンテンツを作りました。何が課題だったかといえば、当事者の顕在化、そしてアライの顕在化です。

 これ(上記)が勉強会の様子です。TRPの副代表理事の堂本直樹さんをスピーカーとしてお呼びしました。一人の社会人として、また、TRP副代表理事の立場として、どんな想いを持っていらっしゃるのかを語っていただきました。どうして堂本さんにお願いしたのかと言いますと、JTは非常にドメスティックな会社でして、同じようにドメスティックな企業に勤めていらっしゃって、かつ当事者であることをオープンにしている方にしゃべっていただきたかったんです。そうすることによって、うちの会社にも当事者がいるんだということを、リアルにイメージしてほしかったんです。

 

 続いて、LGBT支援に対する動機付けの部分です。身近で自分の事としてイメージしやすい題材を選びました。「たばこ」です。というのも、「アライを増やして、共存社会の実現を目指す」というのは、実は、たばこも似たような境遇なんです。たばことLGBTを一緒にしないで、と思われる方には申し訳ないのですが、たばこもマイノリティなんです。たばこのマイノリティ性を考えることで、目指すべき共存社会の実現に向けての取り組みの方向性を伝えようと思いました。

 誰の、何のために多様性を尊重するのか? という部分では、『「効果的なチームとは何か」を知る』というグーグル社の調査を参考にしました。チームのパフォーマンスを上げる鍵というのは、「心理的安全性」にあるというアレです。企業人・社会人にとって、生産性を上げる、パフォーマンスを上げる、というフレーズは一番響きますよね。だから、これを使いました。

 勉強会ではグループに分けて、それぞれのマイノリティ体験を話してもらいました。人って必ず、マイノリティな側面を持っていますよね。それを話してもらって、知ってもらって、感じてもらえるようなグループワークをしました。そして、他の人と違うことについて、どう思いますか、と聞いてみたところ、こんな発言が返ってきました。

 「好きなものは好きなんだ」「変えられないじゃん、だって私は私だから」「他の人にわかってもらえなくてもいい」

 それを性自認とか性的指向に換えたら一緒でしょって。LGBTのことだけではなくて、「多様性を受け入れる」ということは、こういう価値観のことなんですよね。なんとなくでも、こんなことを知ってもらいたくて、このような勉強会のコンセプトを作ってみました。

 

 「マイノリティ同士だからこその共通点がある」。こんな説明をしました。

 LGBTを取り巻く環境を見ると、当事者は約1割の人で、残りの9割って異性愛者・ストレートです。当然、抵抗者もいるわけです。目指すべき共存社会の実現のためには、共感者(アライ)を増やさなければならない。LGBTのアライですね。

 では、JTはどうか。喫煙者は約2割(18%強)です。当然、たばこを良く思われない方も存在します。「たばこを許してください。認めてください」。非喫煙者との共存社会を実現していきたいわけです。そのためには、「たばこアライ」を作らなければいけない。一緒ですよね。結局、マイノリティ同士だからこその取り組みの共通点があるんじゃないか。そんな想いを含めて、LGBTへの理解や考えが深まるよう勉強会を行いました。

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