そんな七崎さんに、「亮介さんとは仲良くやってるの?」と聞くと、「普通です(笑)」との答え。

「昨日もすごく怒られてね。最近飼いはじめた犬がケージの中でウンコを踏んでいるのに気がつかず外に出しちゃって、そのまま仕事に行ってしまったの。そうしたら、先に帰ってきた亮介くんが、絨毯がウンコだらけになってたから怒っちゃって。“なんでそんなにバカなの!”って言われて、“すいません”って謝ったけど、まだ赤ちゃん犬だし、今の時期はしつけが大事だから犬を怒ればいいのにさ。なかなか新婚の時のようにはいかないものですね(苦笑)」
 なんだかんだ言いながら、二人で楽しく暮らしているようだ(笑)

「どんな人に読んでもらいたい?」と水を向けると、「全国のみなさんに読んでほしいけど、特に学校の先生とか、政治家とか、人の上に立つような人とかに読んでほしいです。福士先生とか、葛西警察署の警察官とかにもね(笑)。あとは、セクシュアルマイノリティ当事者、特に若い当事者ですかね。こういうふうにしたらいいんだ、頑張ろうって思ってもらってもいいし。こうはなりたくないな、この人のこういうところが嫌いだから自分は気をつけようとか、反面教師的に思ってくれても全然いいです」

最後に、これからの夢や目標を尋ねてみた。
「こうして本が出版されたんで、その本を持って、いろんな都道府県に行ってみたいです。講演をしたり、読んでくれた人とお話ししたり、訪れた地域の人たちと触れ合ってみたい。友達をたくさん作りたいです。

それから、僕が友人たちと運営しているLGBTのためのウェディングプランニング会社「ジュエリアス」の活動も、「LGBTコミュニティ江戸川」の活動も、さらに頑張っていきたいです。そうそう、いま、行政書士の資格を取りたいと思っているんです。公正証書をはじめとした書類の手続きもそうですが、同性のカップルをサポートしていくためには、行政書士の資格があれば便利だな、と思って」

あっけらかんとして、それでいてどこまでも前向きな七崎さん。ぜひ本書を手に取って、彼の半生から、さまざまなものを感じていただきたい。

取材・文/山縣真矢

[関連ウェブ記事]
●文春オンライン(2019.4.26)
 『ゲイの僕がずっと「美輪明宏さんみたいになるしかない」と思っていた理由――書籍化決定記念インタビュー
 https://bunshun.jp/articles/-/11721

●BuzzFeed Japan(2016.4.26)
 『「結婚ごっこ乙」と言われ、こっそり泣いた 私たちが同性婚を求める理由』
 https://www.buzzfeed.com/jp/kazukiwatanabe/we-want-real-marriage

■七崎良輔
1987年、北海道生まれ。高校卒業後、上京。2015年9月、パートナーシップ契約公正証書を結んだ夫と共に「LGBTコミュニティ江戸川」を立ち上げる。同年9月、夫とともに区役所に婚姻届を提出したが不受理。2016年4月、LGBTのためのウエディングプラニング会社「合同会社Juerias LGBT Wedding」を設立。すべての人が幸せになれる結婚式を提供することを目指し活動を開始する。同年10月、築地本願寺で宗派公認、史上初の同性結婚式を挙げて話題に。2019年4月、働きかけが実り、江戸川区で「同性パートナーシップ証明制度」が導入され、その第1号カップルとなる。公式ブログ『ゲイ夫夫♡良輔&亮介の日常』
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