1969年6月28日に勃発した「ストーンウォールの反乱」から、今年でちょうど50年。この記念すべき年のニューヨークシティ・プライドは「ワールドプライド」として、盛大に開催されました。
All Photos(C)TRP/Photo by Akane Kiyohara

●『NYC Pride 2019|WorldPride NYC | Stonewall50』公式サイト
 https://2019-worldpride-stonewall50.nycpride.org

 

2019年6月30日(日)。
最終日を飾るメインイベント「プライドマーチ」に、東京レインボープライド(TRP)がフロートを出展し、日本チーム総勢250人で参加しました。 TRPのフロートは、セクション10の38番目。チェックインは18時と、1週間前に主催者から連絡がありました。マーチ自体は午後12時スタートで、前年までのことを考えると、夕方には終了するくらいのイメージでいたのですが、チェックインが18時という想定外の事態に困惑しつつも、InterPrideに加盟しているわけでもないし、フロート初出展だし、致し方ないのかなと思っていました。

日が暮れる前に待機場所で日本チームの集合写真を。

 

TRPフロートのコンセプトは「和」「祭り」。それに合わせてデザイナーのコシノジュンコさんが法被をデザイン。ニューヨークにも支店があるラーメンの「一風堂」さんが協賛。

それでも予定どおりスタートできていればよかったのですが、そこはアメリカ、ニューヨーク。いつでも出発できるよう18時には指定の集合場所(30丁目)で待機していたのですが、すでにその時点で、3時間遅れ(?)といった情報もあり、先行きに不安を抱きながら、ただひたすら待つしかありませんでした。時折、主催側のスタッフが、もう少し、何時くらいかなあ、と曖昧な情報を伝えてくれるのですが、どれもこれも裏切られ、ぬか喜びの連続で、日が西に傾き、美しい夕日もなんだかあまり嬉しくなく、気がつくと日がとっぷりと暮れ、日本チームに疲労の色が見え始め、待ちくたびれてテンションも下がり……。

どんよりとした空気が漂うなか、ようやく、待機場所から動き出したのが、午後10時過ぎ、マーチのルートとなる5番街に到達したのが、午後10時45分頃。かれこれ5時間近く遅れてのマーチがついにスタートしたのでした。振り返るとエンパイア・ステート・ビルがレインボーカラーにライトアップされ、私たち日本チームを祝福してくれていました。沿道の人出はかなり少なくなってはいましたが、それでも私たち日本チームに「Happy Pride!」と温かい声援をかけてくれます。

レインボーにライトアップされたエンパイア・ステート・ビルを背景に。

深夜にも関わらず沿道で熱烈な声援を送ってくれる人たちに感激!

そして、26丁目に差し掛かり、TRPのフロート、ダブルデッカーバスが出現すると、大歓声が上がり、これまでの鬱憤を爆発させるかのように、一気にテンションが最高潮に! バスのルーフトップの最前列には、ゴージャスな着物に身を包んだ日本を代表するドラァグクイーン、ホッシーさんが、神々しく手を振っています。スピーカーから流れるノリのいい音楽とともに、紙吹雪とシャボン玉を振り撒きながら、私たちのダブルデッカーは、街灯に照らされた5番街を威風堂々と行進していきます。それに先導されて、日本チームの面々が飛び跳ねながら、ノリノリで進んでいきます。

ゴージャスな和の装いで手を振るホッシーさん。

 

紙吹雪、シャボン玉が舞う中を行進するダブルデッカーバス。

5番街を南下し、クリスファー・ストリートに差し掛かると、いよいよ「ストーンウォール・イン」が近づいてきます。沿道の声援も、大きくなっていきます。前のフロートとの間隔を空けながら、ゆっくりゆっくり進んでいきます。そして、ちょうど日付が変わる頃、日本チームはストーンウォール・インに到達しました。50年前、多くの「ゲイ」たちが公権力に向けて怒りをぶつけ、迫害に抵抗し、解放を叫んで暴動を起こした「プライドの聖地」の前で、この瞬間を永遠に刻むべく、写真を撮影しました。

ストーンウォール・インの前で。

ストーンウォールを過ぎた後は、時間も時間だし、早く終わらせたいのか、私たちのダブルデッカーは、人の足では追いつけないほどのスピードで7番街を一気に北上してゴール地点に向かっていきました。小さくなっていくその影を見守りながら、私たちは深夜のニューヨークの街を、余韻に浸って歩いていきました。

後から聞いたところによると、今年は約700ものグループが参加し、約15万人が行進し、フロートの数は160(前年が100)にものぼったそうです。日本人からすれば、規模感は事前にわかっていたわけだから、それに合わせてなんとか時間どおり仕切ってよ、5時間遅れなんて、ありえない。そう思ってしまうけれど、そこはアメリカ、ニューヨーク。なかなか一筋縄ではいきません。何もかも、スケールが大きい街なのです。

後日、昼間のマーチの映像を見ると、沿道に詰めかけた大観衆の大歓声に包まれながら行進していて、この臨場感や一体感が体験できなかったことは本当に残念に思いました。それでも、それぞれに思うところはあるでしょうが、こうしてストーンウォール50周年に、総勢250人もの仲間と一緒に深夜のニューヨークを歩けたことは、一生忘れることのできない思い出になったのではないでしょうか。

勇気をもらい、元気をもらい、あらためて「Pride」について考える良い機会になりました。それぞれが感じた思いを、これからの日本での活動や生活の中で生かしていけるならば、フロートを出展したTRPとしても嬉しい限りです。

[関連動画]

https://www.youtube.com/watch?v=zu345kwO6qE

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●古田大輔(BuzzFeed Japan シニアフェロー)
「ニューヨークのLGBTパレードに日本から250人が参加
 深夜まで続く大声援【動画】」
https://www.buzzfeed.com/daisukefuruta/pride-parade-jp