先日、東京で行われた台湾のレズビアン作家・陳雪さんと、松浦理英子さんの対談に参加してきました。松浦理英子さんが対談の中で、小説は、特に日本の物語は、常にマイノリティーを主役に描いてきた、と言っていました。録音はしていないので、一字一句正しくはないのですが、だいたいそんな感じ。松浦理英子さんは、御年61歳。レズビアンのバイブル、『ナチュラル・ウーマン』(河出書房新社)が発売してから、32年。大きな文学賞の選考委員もしているような大先生が、こういうことを断言してくれるのは、とても嬉しい。読者からもそういう物語を読みたいと、声をあげていいんだと、ちょっと自信が持てました。みなさんも、どんどん出版社には感想を送りましょう。
さて、最近、なんだか家族のことを考える機会が多いです。みなさんもそうでしょうか。
国を相手にした同性婚を求める損害賠償の裁判のニュースも、様々な媒体で見かけます。茨城県は、7月1日、全国で初めて、県単位でパートナーシップ制度を導入しました。9月28日に新宿のK's cinemaで上映開始された『バオバオ フツウの家族』は、それぞれの思惑で子供が欲しいレズビアンとゲイのカップル、そしてその周囲の家族の物語。そして、『劇場版 おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜』は、恋愛が成就した次のステップ、2人がこれからの人生の時間を共有できるのか、という難しい問題を扱っている(ように、私は思いました)。
私が常日頃、アメリカやヨーロッパのLGBTコンテンツを消費しまくっているせいか、加えて海外の同性婚法制化の際の議員の超ポジティブな演説を何度も聞いているせいか、日本国内の同性婚やパートナーシップに対する反応や、アジアの映画を見て、少しズレを感じることがあるのです。え? 優先順位それでいいの? とか。いやもっと話せよ、会話しろよ、とか。それが実は、異性と結婚した友人たちの言う愚痴にも、同じことを思っているのです。
世の中には、異性愛者の結婚や不倫や義実家との関係や跡取りや相続やそれを取り巻く物語が大量にあります。それほど、「結婚」というものは大変だということなんでしょう。「結婚」に関してはどう考えても異性愛者の方が、経験値が多いはずなので、「結婚した」「離婚した」「結婚しなかった」方々の話を良く聞いた方がよさそうだなあと思うのです。
異性愛者の間でも、3組に1組が離婚すると言われていて、保育園に入るためにペーパー離婚するとか、虐待事件とか孤独死も問題になっている日本で、(同性の)婚姻制度が私たちの何を守ってくれるのか、何を守ってくれないのか、ゆっくり考える時間が必要だと感じます。
まあそんなこと考えなくても、制度としての同性婚の法制化は絶対必要ですけどね!