イギリス、ドイツ、フランス、フィンランド、オーストラリア、そしてニュージーランドの大使館がブースを出していた。性的少数者への連帯を示すと同時に、大使がいることにより警備の警察官が会場内に配備されるため、安全性を高めるという目的があったようだ。ニュージーランド大使館のブースでは、フィリップ・ターナー駐韓ニュージーランド大使のパートナーである池田宏さんが、韓国語で参加者にグッズを配りながら挨拶をしていた。ソウルのパレードのステージ上でスピーチをしたこともあってか、あちこちから声がかかる人気ぶりだった。

 

韓国のパレードで特徴的なのは、労働組合がブースを出すにとどまらず、人権監視団、警備など様々なボランティア活動を行ってサポートしていることだ。その中の何人かになぜ参加したのかと聞いてみたのだが「当たり前のことなのに、なぜそんなことを聞くのか」と逆に質問される有様だった。イギリス映画『パレードへようこそ』を地で行く連帯の風景が、韓国にはしっかり根付いている。

「仁川の地元民はパレードを歓迎します」と書かれたTシャツを着ているボランティア(撮影:筆者)

ブースの中には、保守プロテスタントから不道徳なものとして攻撃されるという共通点を持つ、セックスワーカーのグループのものもあった。「スカーレット連帯チャチャセックスワーカー権利の会」で活動し、自らもセックスワーカーだと明かしたコミさんは、韓国におけるセックスワーカーの置かれた立場について次のように説明した。

「あちこちの建物を借りて営業をしても、1カ月も経てば取り締まりに遭う。警察に連行され、取り調べを受けるが、セックスワーカーの人権を尊重せず、羞恥心を与えるような尋問をする」

体位を聞かれたり、「気持ちよかったのか」と聞かれたり、わざと性行為の最中に踏み込んでくるなど、人権を完全に無視した扱いが行われている。

セックスワークの脱犯罪化を目標に掲げ、セックスワーカーや女性団体は、自らの意思で行うセックスワークも違法扱いする性売買特別法、性売買特別法は韓国憲法15条の職業選択の自由に反しているとして、憲法裁判所に違憲訴訟を起こしている。同法が違憲と認めることは、国による個人の自由への行き過ぎた干渉を排除するものとなり、結婚を両性の結合としている法律にも影響を与え、一気に同性婚を認める形になるとの見方もある。

ちなみに、保守プロテスタントは、性的指向による差別を禁止する条項を持つ各自治体の人権条例の廃止、軍隊内での同性愛を禁じた軍刑法92条6項の維持、国レベルでの差別禁止法の制定に反対すると同時に、性売買特別法の廃止に反対する運動も繰り広げている。

「スカーレット連帯チャチャセックスワーカー権利の会」のブース(撮影:筆者)

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