今回の「ティーヌが案内するLGBTを考える小説入門」も特別編、前回の李琴峰さんのインタビューの後編です。
(プロフィール)
李琴峰(り・ことみ/Li Kotomi/Li Qinfeng)
日中二言語作家、日中翻訳者、通訳者。1989年台湾生まれ。2013年来日。2017年、初めて第二言語である日本語で書いた小説「独り舞」(原題「独舞」)にて第60回群像新人文学賞優秀作を受賞。以来、二言語作家として創作・翻訳、通訳など活動中。2019年、小説「五つ数えれば三日月が」で、第161回芥川龍之介賞候補に。●「李琴峰の公式サイト」https://www.likotomi.com
LGBTQをテーマにした作品たち
テ いろんなところで、「中山可穂が好き」っておっしゃってますが、他に好きな、レズビアンやゲイ、トランスジェンダーなどをテーマにした作品ってありますか?
李 やっぱり中山可穂さんですね。第一に挙げないといけないのが中山可穂。といっても、中山さんの全ての小説が同じように好きかというとそうでもなくて、なかには、結構好きな小説と、読んであまり……というのもあるんで、そのへんは好みって感じかな。
テ 一番好きなのは何ですか?
李 やっぱり最初に読んだ、『白い薔薇の淵まで』(集英社)。一番有名ですけど、一番良いと思う。ちょっとマイナーなものを挙げると、『花伽藍』(KADOKAWA)という短編集に収録されている「燦雨」という作品。この短編は、老後のレズビアンカップルが寄り添って生きる姿を描いていて、レズビアンを描く小説の中でも結構珍しい着眼点で、こういうものはもっと書かれるべきだと思う。残念ながら、今でも百合の作品とかは主に女子高生が主人公で、社会人は少なかったりする。レズビアンを描く小説は、私の書くものも含めて、だいたい20代から30代が多いのが現状ですよね。
テ 私もトーベ・ヤンソン『フェアプレイ』(筑摩書房)しか知らない(追記:後日読んだ、甘耀明『冬将軍が来た夏』〈白水社〉もありました)。
李 うん。日本のものだと中山可穂さんのこれしか知らない。もっと評価されるべきだと思う。あと、松浦理英子さんの作品も好きです。彼女がレズビアンって言うか、性とか女性の身体性とか、もっと広い視点で追求している作家のような気がして、好きです。