今回の「ティーヌが案内するLGBTを考える小説入門」は、特別編です。TRP共同代表理事の山縣真矢さんと一緒に、第161回芥川龍之介賞に、「五つ数えれば三日月が」がノミネートされた李琴峰さんにお話を伺ってきました。そのインタビューの様子をお届けします。

琴峰さんは、私が主催している「読書サロン」にもよく参加してくださって、いろんな本の感想を語り合ってきました。琴峰さんのデビュー作『独り舞』(講談社)が第60回群像新人文学賞優秀作を受賞したときも、早稲田大学で一緒にトークイベントをさせてもらいました。残念ながらそちらは記録がなく、大変悔しい思いをしましたので、今回はかなり大容量で、しっかり残そうと意気込んで臨んでおります。

「李琴峰の公式サイト」から過去の作品やエッセイ・書評など読めますので、この機会に是非チェックしてみてください。もちろん、『五つ数えれば三日月が』(文藝春秋)も、是非手に取ってくださいね。

 

(プロフィール)
李琴峰(り・ことみ/Li Kotomi/Li Qinfeng)
日中二言語作家、日中翻訳者、通訳者。1989年台湾生まれ。2013年来日。2017年、初めて第二言語である日本語で書いた小説「独り舞」(原題「独舞」)にて第60回群像新人文学賞優秀作を受賞。以来、二言語作家として創作・翻訳、通訳など活動中。2019年、小説「五つ数えれば三日月が」で、第161回芥川龍之介賞候補に。

 

 

芥川賞の候補になって

ティーヌ(以下、テ) このたびは芥川賞ノミネートおめでとうございます。
李琴峰(以下、李) ありがとうございます。あ、髪切った?
 うん、だいぶ切った。
 かっこいい。
 あ、ありがとう(笑)。えっとこのインタビューではですね、「小説って楽しいよね」ってことをみんなに伝えて、さらに、もっと琴峰さんの本が売れて、重版されて、次作が出るよう盛り上げたいなとも思っています。よろしくお願いします。

 日本のLGBTコミュニティーには、学生の時から出入りしてたんですか?
 コミュニティーと言ってもいろんなものがあると思うけれども、何かのイベントに参加してから二丁目に行くとかそんな感じでした。
 琴峰さんが「独り舞」で賞を取ったり、「五つ数えれば三日月が」が芥川賞にノミネートされたことへの、LGBT当事者の友人たちの反応ってどうでしたか?
 ほんと人それぞれ。まったくそういうニュースに触れない人もいるし。一方で、とてもびっくりしていた人もいた。特に芥川賞ノミネートはね。『群像』デビューはニュースとかであまり取り上げられなかったけれど、芥川賞候補のほうは、たくさんの人がニュースやテレビで知ったようで、大きな反響があった。単行本が出た後に、読んだよって連絡が来たりもして。
 台湾でもニュースになっていましたね。台湾の友人たちからも、連絡ありました?
 芥川賞候補が発表された6月17日は、LINEとか、Facebookとか、Twitterとか、あと電話もだけど、ずっとずっと、メッセージが来てました。
 へえーすごい。
 でも、一日だけだけどね。翌日になると、しーん(笑)。劇的なことは特になく、普通に生活していました。台湾のメディアは、作品が日本語だから読めていないんだけど、当日にコメントを要求してきたりとかした。「候補になったんだけれどもお気持ちは?」「この作品はどんな作品ですか?」「何について書いていますか?」って、電話で。まあ、しょうがないやって(笑)。
 その反応に対して、琴峰さんはどう思いました?
 んー、そんなもんかなって。私が『独り舞』でデビューしたときに、知り合いの文学研究者はこう言ってた。「台湾の人が、しかも日本生まれ日本育ちじゃない人が、日本語で小説を書いて受賞するのは珍しいことなので、大々的に取り上げられるんじゃない?」と。けれど、「そんなことないよね」と私は思ってて、実際、そんなことはなかった(笑)。本当に反応はそれぞれで、「一大事だ!」という人もいれば、「ああ、そうなんだ」ってぐらいの人もいる。
 私としては一大事だったんですけどね! みんなに言いまくったよ。山縣さんにもLINEしました(笑)
 そうそうそう。あまり一般的に知られていないことといえば、事前取材のことかな。要は、候補になった人が、仮に受賞したときに新聞社がすぐに記事とか報道が出せるように、事前に囲み取材という形で記者会見をするんですよ。私ももちろんやったんだけど、なるほど、そういうことをやるんだ、と。
 じゃあ、受賞の言葉とかは前撮りなの?
 いや、受賞の言葉じゃなくて、あくまでも、囲み取材。この作品についてとか、何を表現したいのかとか、記者がいろいろ質問して、応える。それで受賞したら記事化すると。
 何社ぐらい来るの?
 8社かな。
 へー、すごい。
 で、それを毎回やるんですよね、全ての候補者に対して。あと、一般的に知られていないのが、芥川賞の発表当日に、発表してすぐ記者会見するじゃないですか。だからみんなどこかで待つんですよ。受賞したらすぐ会場の帝国ホテルに行けるように、どこか近いところで待って、受賞したらすぐに行く、それですぐに記者会見する。
 へー。
 今村夏子さんとかもいたから受賞するとは思っていなかったんだけど、それにしてもね、受賞するかしないかの差ってとても激しいんですよ。発行部数にも反映されるし。受賞すると部数が10倍になる、とかね。そんな感じの現実はやっぱりこの業界にはある。
 最近、特に文学賞受賞みたいなのがクローズアップされているような気がするけれど。
山縣真矢(以下、山) そうやって新しい人を発掘しないと、文壇も出版界も立ちゆかないし、賞を取ったら、普段あまり本を読まない人にも注目され、そういう人も読んだりする。特に芥川賞・直木賞受賞作は、昔からその傾向が顕著な気がします。
 別に文学賞に選ばれたからといって、絶対的に良い作品というわけじゃなくて、あくまで相対的なものだし、それぞれの作家が表現したいもの、あるいは選考委員が結局どう読んでいるのかが関係してくるわけです。でも受賞作だけがクローズアップされるという現実があって、そこはまあ、そうだよね、という感じかな。
 受賞すると、ノミネートだけとは全然違うよね。
 はー、10倍も違うんだ!

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