同性婚法の概要

 こうして最終的には、(1)が賛成多数により採択された。以下、その概要を整理しておきたい。

 本法により形成される関係については、第2条に「性別を同じくする二人が、共同生活を営むことを目的として、親密性及び排他性ある永続的な結合関係を成立させることができる」と規定する。反対派に口実を与えないようにするため、748号解釈で使われた言い回しを引き写している。本法では「第2条関係」という用語が繰り返し使われ、キー概念になっている。この同性結合関係は戸政機関において「結婚」として登録することができるとされた(4条)ことで、実質的には同性婚に相当することになる。

 当事者間の関係においては、ほぼ異性の夫婦と同様の法的効力が及ぼされている。同居義務(11条)、居所の決定(12条)、日常家事代理(13条)、生活費用・家事の分担(14条)、夫婦財産制(15条)、関係終了事由(17条)、相互の法定後見(21条)、扶養義務(22条)、配偶者相続権(23条)、民法およびその他の法律における配偶者、夫婦、結婚などの規定の一律準用(24条)などである。24条によって社会保障、税制、刑事法、DV、在留資格など、各種の法に埋め込まれた夫婦としての権利、利益はすべて同性間にも適用されることになる。

 他方で748号解釈には言及されなかった子どもの問題では、異性婚との差異を残している。例えば、同性カップルには異性婚のように嫡出推定が準用されない。養子縁組では一方の実子を他方が養子にする連れ子養子だけが認められ(20条)、他人の子を共同で養子に迎えることを認める規定はない。また、人工生殖技術の利用の可否については未確定なままである。今回の立法では、大法官が命じていないことまでは敢えて手を付けなかったものと推察される。

 同様に、台湾人と外国籍の同性パートナーの間の結婚については、連載第1回で紹介したように、相手の国の法律が同性婚を法制化している場合に限り、結婚が可能となる(渉外民事法律適用法46条)。残念ながら同性婚法のない国の日本人は、台湾人の同性パートナーと結婚することができない。

 アンチ同性婚派がおもにキリスト教会の人たちであることに配慮して、以下のような奇妙な規定もおかれた。「いかなる者又は団体も法にもとづいて信教の自由及びその他の自由権を有し、本法の施行により影響を受けることがない」(26条)。同性家族の法制化と信教の自由はまったく別次元のことがらであり、同性婚を承認することが信教の自由の制約になるはずがない。キリスト教信者への配慮であろう。

「第2条関係 台湾全土の戸政事務所に大集合」。©台湾伴侶権益推動連盟

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