同性婚法の成立

 台湾で今年5月24日から施行された同性婚法の正式名称は、「司法院釈字第748号解釈施行法」という。これには台湾の憲法裁判所に相当する司法院大法官会議が、同性間の婚姻を規定していない現行民法の合憲性について、2017年5月24日に示した第748号解釈を施行するための特別法という意味がある。この法律自体はわずか27ヵ条の簡単なものであるが、当事者を始めとする多くの人たちの長年の苦闘の末に実った宝のような努力の結晶である。これにより台湾は世界で27カ国目、アジアでははじめて、性別を問うことなく法律上の婚姻を成立させることとなり、台湾のLGBTは二級市民の汚名を返上した。本法は、異性間の婚姻について規定する民法の規定のいくつかを同性間にも準用することにより、同性間でも結婚できる法制度を打ち立てたのである。

 大法官第748号解釈では、2年以内に同性間の婚姻の自由を保障する法律が成立しなかった場合には、5月24日から現行法にもとづいて同性間の婚姻を受け付けることを命じていた。そのためもし具体的な法律ができないままで24日を迎えてしまったなら、戸籍事務の現場では混乱が生じることも懸念された。法案採択ののち、総統による法律公布、その後の法施行というスケジュールを考慮すると、5月17日は待ったなしの崖っぷちであった。台湾の一院制の国会である立法院において、まさにタイムリミットの2019年5月17日午後、同性婚法はようやく採択された。野党国民党の議員の多くは、同性間に婚姻以外の家族形態ならともかく、婚姻だけは阻止しようと執拗に抵抗したが、与党民進党などが賛成多数で押し切った。

雨上がりの空に虹が

 立法院における決戦の日、5月17日は折りしも「国際反ホモフォビア・トランスフォビア・バイフォビアの日」。ときおり小雨が降りしきる中、台北市中心部、立法院脇の青島東路には朝から「婚姻平権プラットフォーム」[*1]などが4万人の支援者を動員し、「評決では負けられない、立法院がんばれ!」を叫んでいた。立法院では午前中、立法院長、蘇嘉全の議長のもと、行政院(内閣)提出の748号解釈施行法案、国民党立法委員(国会議員)の頼士葆ら23名が提案した「同性イエ法案」、民進党立法委員の林岱樺ら17名が提出した「同性ユニオン法案」をめぐって、「朝野協商」(与野党協議)が行われた。法案の名称、同性カップルにいかなる関係(結婚orイエorユニオン)を成立させるか、当事者の適齢、保障される具体的な法的権利・義務など、十数ヵ条について合意が成立しなかった。

 その結果、休憩をとる間もなく、引き続いて午後からは院会(本会議)を開催し、逐条的に討論し、いよいよ採決に付すこととなった。正午が近づくと、ゆる〜い台湾らしくも、なんと議場には弁当が運び込まれ、立法委員たちは弁当をぱくつきながらの審議継続となった。

[*1]「婚姻平権プラットフォーム」は2017年に婚姻平等化を実現することを目的として、以下、5つのNGOが連合して結成した団体。台湾LGBT諮詢ホットライン、台湾LGBT家庭権益促進会、婦女新知基金会、台湾LGBT人権法案ロビー連盟、GagaOOLala。

婚姻平等プラットフォームが支援者に立法院へ集まることを呼びかけた「婚姻の権利のための緊急動員令」。

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