同性婚実現の方式

 台湾はメキシコを含めると世界で27番目に、そしてアジアでは初めて、同性間でも法的な婚姻を成立させた国となった。これらの国々で異性間限定を解除し、同性間にも差別なく法的婚姻を開放することを決定づける手法には、大きく分けてふたつの方式がある。ひとつは立法機関による法制定(ないし改正)によるものである。アイルランドやオーストラリアなどのように議会での決議の前に国民投票を実施し、民意を問うこともある。この方式は民主的な手続きを経た議会での多数決によって同性婚を実現させるものである。議会の多数派が同性婚に賛成するならば、これが手っ取り早い。

 もうひとつの方式は、最高裁判所や憲法裁判所など、司法部門において裁判官が、同性間に結婚を成立させない法律を憲法違反と判断することによって、同性婚の成立に道を開くものである。南アフリカ、ブラジル、そしてアメリカ合衆国がこのタイプに属す。多数決による政治プロセスでは容易に決着に至らない場合に、司法部門が憲法の価値を援用することにより、結婚を異性間に限定する法律を違憲と判断するというものである。

 多数決によっても侵すことのできないマイノリティの人権を擁護することは、むしろ多数決原理が支配する政治部門からは独立した司法こそが果たすにふさわしい役割であるともされる。政治と司法は二者択一的というよりも、相互補完的な関係にあり、早期に同性婚を実現させようとするならば、両方から攻めていくのが効果的であろう。日本でも今年2月に同性間の婚姻を求める集団訴訟が、札幌、東京、名古屋、大阪の各地裁に提起され、ようやく司法ルートが起動した。7月の参議院選挙では同性婚問題が各党の公約にも加えられたり、おもに同性婚の実現を訴える当事者候補者が当選するなど、政治と司法の競演が始まった。

 賛成、反対で世論が鋭く対立し、なかなか決着がつけられない国では、司法による解決は有力な選択肢であるが、台湾はまさにこのパターンであった。

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