告白から数年がたって、当時付き合っていた彼女を実家に連れて行ったときのこと。母は、私がその当時の彼女と楽しそうに話したり、私が幸せそうな顔をしているのを見てこう思ったとそうです。「由梨が幸せそうな顔をしている」。ここが母のターニングポイントでした。私の幸せそうな顔を見て、自分の娘が幸せなんだったら、それでいいか、という気持ちになったといいます。別に普通じゃなくてもいいか、と。その時に「普通って何だろう」と思い直したようです。40数年前、国際結婚が「普通」ではなかった時代に、日本人の母は、在日韓国人の父と結婚しました。「そうよね、それも普通じゃないわよね」。かくして、普通じゃない国際結婚夫婦の間に、普通じゃないレズビアンの娘が育った、ということになります。
孫も生まれ、どこにでもいるおじいちゃん、おばあちゃんのように友人に孫の話をする母ですが、時には「あら、お孫さんハーフなの?」「娘さんのだんなさんはオランダ人?」といった質問をされることもあります。時と場合にもよるようですが、母は「娘のパートナーはアメリカ人で、女性なのよ」と、さらりと言うそうです。「別に悪いことをしているわけでもないし、隠す必要もないしね」。20数年前の「聞かない自由もある」からだいぶ前進したのかなあ、と思います。母は仕事関係で出会った方から、「実は僕、ゲイなんです」と告白されたことがあったそうです。それに対して母は、「実は私の娘はレズビアンで、アメリカ人の奥さんがいてオランダに住んでいるんですよ」と返したところ、意気投合(笑)。こんなこと、20年前には想像もつきませんでしたが。