レインボーに染まる台北
2019年10月、台北には6色のレインボーが街中にあふれていた。台湾の玄関口、桃園国際空港の入国ゲートをくぐると、「Welcome to Taiwan Pride」と記したレインボーのパネルが、まずすべての入国者をお出迎えしてくれた。いまやゲイタウンとしてもすっかり定着した感がある台北の原宿、西門町。待ち合わせによく使われるMRT西門駅6番出口前の車道は、「TAIPEI」の六文字とともにレインボーに塗装された。ほかに西門町の繁華街には大きなレインボーのゲートも掲げられた。
パレードコースの沿道の街路灯にも、レインボーフラッグがあちこちに飾られ、台湾プライドが近づいていることを知らせていた。台北市は10月を「同志驕傲月」(LGBTプライド月間)と銘打ち、「同志が互いに可視化され、社会には同志を可視化する。パワーあふれる、包容力ある、自信に満ちた台北を世界に認識してもらおう」とのキャンペーンを展開した。市政府は東部の繁華街、信義威秀広場で「2019台北市同志公民活動」(LGBT市民活動)の一環として、同志公民活動20周年展『現在就是未来The Future is Now』と題したパネル展を開催した(10月23日〜11月13日)。
展示は、2000年に台北市の主催により「同玩節」として始まったLGBTのイベントから、今年5月24日の同性婚登録開始に至るおもな歴史的な出来事を振り返るもの。内容は英文付きでネット上にも公開されている(https://loveislovetw.org)。最後のパネルでは、「尊重多元的友善城市」(多様性を尊重するフレンドリーシティ)を誇らしげに宣言し、次のような言葉で展示を締めくくっている。
「台北市政府はアジアにおける民主的都市のモデルとして、関連する政策をこれからも推進し、多様でハーモナイズされた共栄の価値を堅持します」
盛り上がるピンクエコノミー
Airbnbの統計によると、レインボーウィークには「彩虹旅遊熱潮」(レインボー旅行ブーム)が巻き起こり、68カ国から2.1万人が台北市内のホテルを予約し、これまでの記録を塗り替えたという。今年はパレードの出発点が東へ移動した関係で、台北市の東から西まで市内全域のホテルに予約が入った(聯合報2019.10.26ネット版)。確かに今年のパレードは、ことさら国際色が豊かで、世界中からLGBTが集っていた。
伝統ある台北市観光伝播局のPR誌『台北書刊』621号(2019年10月)は、表紙に婚姻平等化運動の先駆者、祁家威さん(連載第6回参照)がレインボーフラッグを振る姿をあしらって、LGBT特集を組んだ。表紙には、「愛というこの道、一緒に笑って歩み続けよう:風も雨も道連れ、共に権利平等を応援して、コンセンサスを作ろう」と記される。冊子には「多感台北Taipei Senses」と題された付録が綴じ込まれている。台北市内のLGBTゆかりのスポットの紹介、過去17年間の台湾プライドの歴史を振り返るなど、とにかくレインボー一色。台北市はLGBTフレンドリーを観光資源として活用する戦略に出ているのである。