3時間を超えるパレード
例年は3つのコースに分かれて、同時に出発していた台湾プライドは、今年は1本に束ねられたので、とりわけ長い隊列となった。パレードの距離も5.5㎞と長いものとなったので、先頭車が午後1時半にスタートしたのち、最後尾が終点となった総統府前広場に到着したのは、なんとすでに夜7時をまわっていた。TRPのフロートは午後3時くらいにスタートし、6時半を過ぎてようやくゴール地点に到達した。あたりはすっかり薄暮のとばりに包まれていた。
この日はこれほどの長い時間、台北市の幹線道路である忠孝東路の2車線が、レインボーのパレード隊によってすっかり占拠されていたことになる。警察がかくもプライドパレードに協力的で、市民の理解も得られていることは、驚くばかりである。台湾ではさまざまなテーマで街頭でのデモなどの活動が頻繁に行われていて、警察や市民もこうしたことにはすっかり慣れているのである。日本との違いの大きさに愕然とする。
総統府前広場の奥、総統府の目の前にはステージが設置され、パレード終了後の集会が行われた。ここで主催者からこの日のパレードへの参加者が、20万人を超えたことが宣言された。
LGBTの人権を切り口とした国際発信
今回のレインボーウィークに合わせて、台北ではLGBTの人権をテーマとする大規模な国際シンポジウムが、以下のようにいくつも開催された。
- フランス系の国際的人権NGOである「International Federation for Human Right(FIDH)」が、創設40周年の記念シンポとしてアジアで初めての年次総会(40th FIDH Congress)を台北で開催し(10月21日、22日)、同性婚もテーマのひとつとして取り上げられた(https://www.fidh.org/en/region/asia/taiwan/24741)。開幕式には蔡英文総統も出席し、挨拶するなど、台湾政府も支援している。世界各国から人権活動をするNGOや研究者、政府の代表者など450名余りが集結し、日本からも代表が参加した。
- 台湾における同性婚法制定の決め手となった「大法官会議748号解釈」を引き出すことに貢献した台湾伴侶権益推動連盟は、『Marriage Equality and Transgender Movements in Asia「彩虹連線、平権前進」』と題する国際シンポジウムを開催した(10月23日、24日)。台湾をはじめ日本、韓国、香港、タイ、ネパールからの代表が出席し、討論に参加した。同性婚に関しては台湾以外の国では、なお大きな困難に遭遇しながらも、それを突き崩すための地道な努力が続けられていることが報告された。また、トランスジェンダーの、登録された性別の変更に関するルールについて議論が行われた。台湾を含むアジアの国々では、いまだに性別適合手術(SRS)を強制していることが共通の課題となっていることが浮き上がった。日本からは杉山文野さん(TRP共同代表理事)と私が出席した。
- 台湾行政院と欧州共同体EUの共催により『EU-Taiwan LGBTI Human Rights Conference: Marriage Equality & Protection of LGBTI Rights』が開催された(10月24日、25日)。物々しい警備の中、冒頭の開会式には陳建仁副総統が出席し、挨拶した。また、閉幕式では陳其邁行政院副院長が挨拶に駆けつけ、台湾が国を挙げてこの会議を支援していることが分かった。台湾からの報告者として法務部長(大臣)や国会議員(尤美女議員)が登壇し、台湾の現状と課題について報告した。この会議には台湾のほか、日本、韓国、香港、インド、ベトナム、モンゴル、ラオス、スリランカ、ネパール、タイ、ブラジル、フランス、ドイツなど、アジアを中心に、31カ国から260名が参加するという大規模な会議であった。おもな報告のPowerPoint資料が会議のサイトに公表されている(https://gec.ey.gov.tw/en/1376339842D07A67)。日本からは「認定NPO法人ReBit」の理事長・薬師実芳さんと私が参加した。
- 台湾における国立の最高学術研究機構である中央研究院が主催した『Beyond 748: International Conference on Same Sex Marriage and Family(748号解釈を超えて:「同性婚と家族」国際シンポジウム)』が開催された(10月23日、24日。http://regasia.iias.sinica.edu.tw/index.html)。この会議には台湾ほか、アメリカ、フランス、オーストリア、イギリス、香港、ポーランド、イスラエル、カナダなどから専門家が参加し、日本からは曽我部真裕氏(京都大学教授)が出席した。
このように婚姻平等を実現した台湾は、この成果を国際的発進力として大いに活用し始めているのである。