その一方で、虹色ダイバーシティが発表した調査によると、日本では多様な家族(いわゆる LGBT の家族)の方たちの多くが、カミングアウトせずに子育てをしている実態もあります。お母さんが二人いても、「お友達」として幼稚園には伝えていたり、自分自身の親にすら説明をできない・していない家族もいらっしゃいます。私の子育ては、自分の両親や友人、コミュニティーに支えられているからこそ成り立っているところがあります。そんな中でこのような結果を聞いて、驚いたとともに、日本でもまだまだ多様な家族への偏見が存在することを認識させられました。

滞在中、東京レインボープライドの共同代表理事である杉山文野さんと一緒に、LGBTQI+の子育てについて、トークイベントをさせていただきました。法整備や社会的な認知など、日本とオランダには大きな違いはありますが、国を超えても同じこともあります。それは、「親になる」って大変だし、正解はない、ということ。トークの場には、LGBTQI+当事者で子育てをしていらっしゃる方たちもいらっしゃいました。その方たちの話を聞いて、日本の現状、特に地方都市ではまだまだ LGBTQI+に対する偏見があり、当事者の多くがカミングアウトできない傾向にあるといいます。私たちの子育ては私の両親、妻の両親、近所に住む友人や幼稚園の保護者コミュニティーなどに支えられながら成り立っています。カミングアウトができないと、得られるサポートも限られるでしょう。オランダの生活に慣れてしまっている私は、失礼ながらも「カミングアウトして、積極的にサポートを求めてもいいのに」と思いましたが、そうはできない現実があるわけです。

上野公園で「終末きもいん 健山」なる大道芸人にくぎづけになる長女とお友達。

また、1119日(火)に衆議院第二議員会館にて行われた、「マリフォー国会」にも参加してきました。日本における結婚の自由はいまだに法整備されておらず、同性カップルが結婚できない現状があります。私のように子供がいる家庭や、パートナーが病気である、外国人である、高齢にさしかかってきているなど、伴侶と婚姻関係が認められないことで生じる不都合、不便がたくさんあります。不都合や不便だけではなく、異性カップルに比べると明らかに不平等な扱いを受けることもあります。また、これだけ労働市場が国際化している中、同性カップルが結婚できない・認められない国に移住して働こうと考えるにあたって、躊躇する方々もいることでしょう。「そんな人たちは日本に来てくれなくて結構」と思う人もいることかと思います。しかしそうして、日本はどんどん競争力を失っていくわけです。私たちのような多様な家族はすでに社会の中に存在し、日々生活しています。法的な保護を受ける権利があり、そのような法整備がすみやかに実現することを強く希望します。

これまで私は日本にいるLGBTQI+当事者の方々やアライの方々に、私たちの将来がより良いものになるべく、一例としてオランダでこんな生活をしていることを発信してきました。今回の日本滞在では、日本が変わりつつあることを実感した一方で、まだまだカミングアウトできない現状や、偏見に苦しむ環境が根強くあることも感じました。今回でこの連載コラムは最後になってしまいますが、今後もどこかでオランダでの生活について発信していきたいと思います。それを読んだり、知ることで、「こんな生活がある」「子供だって欲しければ持っていい」。そんなふうに、感じてもらえると嬉しいです。今風に言うと、YOLO(You only live once. 人生は一度きり。生きたいように生きればいい。それを始めるのはいつか? 「今でしょう!」(古い)。これまで私のコラムにお付き合いいただき、ありがとうございました!

友達に案内してもらった、倉敷美観地区。

■金 由梨
東京都台東区出身。2009年にエラスムス大学大学院留学のためオランダに移住。
2010年に同性パートナーとワシントンDC(アメリカ)で結婚。現在アムステルダム在住。アムステルダム自由大学大学院にてHRマネージメントを勉強している。3歳になる娘と、5月に出産したばかりの第二子と、二人の子育てに奮闘中! 
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