司法で勝つためには?

 日本でも昨年、全国5つの地裁に、同性間の婚姻を成立させない民法の違憲性を主張する訴訟(結婚の自由をすべての人に訴訟)が提起された。2021年の春から夏以降、第1審判決が相次ぐと見られる。台湾の第748号解釈のような判決が果たして出るのか、不安と期待が渦巻いている。
 せめて1カ所でもいいからいい判決が出ることを願うが、裁判所は本来、前例踏襲主義の権化であり、そもそも保守的なお役所である。世間をあっと言わせるような大胆な判断を避ける傾向がある。日本の裁判所はとくにそうである。そうした裁判所にできることは、すでに変化した「社会通念」なるものを、すくい上げて、文字化することに過ぎない。裁判所がまったく新たな規範の創造を先導するわけはないのである。だとすれば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が収まる頃までに、裁判所の外で同性家族を当たり前の存在として可視化させ、婚姻をめぐる「社会通念」を、我われの力で変えておく必要がある。

 「憲法解釈は事実上、常に社会の主導的力ないし社会のコンセンサスと一致しているものである。それゆえ大法官が行う解釈の趣旨が一定の社会の支持を得られるのであり、だからこそ憲法解釈は最大の価値および影響力を発揮しうるのであり、社会の変遷を促すカギとなる。」(李立如「邁向同性婚姻平権社会」中原大学修士論文2015年204頁)

 これは世界と台湾の同性婚法について台湾の若者が書いた修士論文の一節である。裁判所の判決を決めるのは裁判官ではない。社会の常識なのである。日本が台湾から学ぶことは多いと感じる。

 

■鈴木 賢
1960年北海道生まれ。明治大学法学部教授、北海道大学名誉教授。ゲイの当事者として1989年から札幌で活動を始める。レインボーマーチ札幌を創始。現在「自治体にパートナーシップ制度を求める会」世話人、北海道LGBTネットワーク顧問。

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