台北市政府も同性婚のスタートをお祝い
同日午前11時、台北市の東側、市役所近くに位置する信義戸政事務所前の芝生が広がる野外広場には、強い南国の太陽が照りつけていた。すぐ脇を見上げると台北の新たなランドマーク、101ビルがそびえ立つ。ここで台北市政府と婚姻平等プラットフォーム、台湾LGBT諮詢ホットラインなど同性婚実現に尽力したNGOが共催で、「幸福起跑線」(幸せのスタートライン)と題した同性新婚カップルの誕生をお祝いするセレモニーが開催された。婚姻届を出したばかりの女性同士、男性同士のカップル十数組が、レインボーフラッグが敷かれたバージンロードを通って、こぼれんばかりの笑顔で次々と入場。新婚カップルがキスで祝福に応えると、会場は集まった人たちからの大きな歓声で包まれた。ステージでは台北市の副市長から祝辞が述べられ、一組ずつ副市長から入籍を証明する戸籍簿が手渡された。また、大使館に相当する在台湾のスペイン、イギリス、EUなど各国の外交使節の代表からもお祝いのスピーチがあった。日本と台湾はこんなに近いのに、在台北の日台交流協会の代表の姿は、ない。まだ同性婚が実現していない日本の代表には声がかからなかったのであろう。
会場には台湾同性婚運動のレジェンドでゲイの祁家威氏、同性婚運動の総仕上げの旗振り役を担った婚姻平等プラットフォームの代表でレズビアンの呂欣潔さんらの晴れがましい顔もあった。広場内のブースでは各国代表部が用意したワインやスナック・フードなどが振る舞われ、参加者は容赦なくギラギラと照りつける太陽のもと、歓喜の祝杯を交わした。日本では同性愛者のことを隠花植物などと呼んで日陰者扱いすることがあるが、法律が同性カップルを平等に扱うということが、何を意味するかを絵に描いて見せられた思いがした。台湾の同性愛者は、この日から日陰に身を潜める必要はなくなったのである。