初日の届出は526組

 全国で5月24日に結婚届を出した同性カップルは、526組に及んだ。このうち女性同士が341組(約65%)、男性同士が185組と、女性カップルが3分の2を占めた。これは2015年から始まっていた自治体の同性パートナーの登録と同じ傾向である。また、離島の澎湖県と連江県(馬祖群島)を除く、すべての自治体で届出がなされ、同性カップルが台湾全域で生活していることを実証した。届出が多かったのは、新北市117組を筆頭に、台北市95組、高雄市72組、台中市65組、台南市39組、桃園市36組となっており、ほぼ人口数に比例した届出数であった。

 また、一方が外国人であっても、その本国法で同性間の婚姻が法制化されている場合は、台湾の戸政事務所で結婚届が受理され、オランダなど26カ国(*1)の同性婚先行国の国民との間では、国際同性婚が成立する。これは台湾の国際私法にあたる渉外民事法律適用法46条(*2)の規定にもとづくもので、日本はまだ同性婚を法制化していないので、実際にかなりの数に上ると推察される台湾人と日本人の同性カップルの間に、今回の新法にもとづく婚姻を成立させることはできない。また、同様に台湾人と中国人の間でも同性間で結婚することはできない。

 この日、早くも台湾人の同性パートナーと結婚した南アフリカ籍の人が、内政部移民署台北サービスステーションで配偶者としてのビザの申請が受理されたことが報じられている。同性婚ができるということは、外国籍の同性パートナーに配偶者としての在留資格を与えるということなのである。この点でも異性の配偶者と平等な権利が保障されることになる。

[*1]内政部のサイトによると対象となるのは以下の26カ国。アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイスランド、アイルランド、ルクセンブルク、マルタ、メキシコ(一部の地域)、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、イギリス(一部の地域)、アメリカ、ウルグアイ。https://www.ris.gov.tw/app/portal/2121?sn=1558500077408
[*2]台湾渉外民事法律適用法46条「婚姻の成立は、各当事者の本国法による」。なお、日本の国際私法である「法の適用に関する通則法」24条にもほぼ同様の規定があり、将来、日本で同性婚を法制化した場合にも同様の問題が生じうる。


総統府前広場での野外合同披露宴

 翌日25日の夕方6時から、それまで何度も同性婚の実現を訴えてデモをした総統府前の広場、凱達格蘭(ケタガラン)大道を閉鎖して伴侶盟主催の合同結婚披露宴「同婚宴」が盛大に催された。台湾には屋外にたくさんのテーブルを並べ、料理をケータリングで取り寄せて、長時間にわたって大勢で飲み食いする「辧卓」という風習がある。異性カップルでも道路や広場を占拠して、よくこういうスタイルで披露宴を開くことがある。この形態のパーティは開始、終了時間や招待客の人数、いずれもアバウトで、台湾らしい「ゆるさ」が心地よい。この日は前日、結婚届を出したばかりの同性カップルを招待し、賑々しく露天合同披露宴が開かれたのである。前売り入場チケットはLGBTの当事者を中心に早々と売り切れたという。伴侶盟の背後に、これほど多くの当事者が控えて応援していたのだということが分かる。

 伴侶盟は2013年に同性婚実現に向けて民法改正案をはじめとする3つの多元的家族法案(同性婚、パートナーシップ制度、性愛を前提としない家制度)を作成し,公表している。これが台湾における同性婚法制化へのスタートラインとなったが、実は伴侶盟は、この時もこの場所で1,200席を埋める「辧卓」をやっている。同性婚が実現した暁には、またこの凱道(ケタガラン大道)へ戻って、大宴会をやろうと誓っていたのだという。6年後のこの日、ようやくその夢がかなったのである。

総統府前広場での「同婚宴」のひとこま。

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