出産に伴うパートナーの産休

日本では男性の産休制度は整っていないようです。オランダでは、「partnerverlof」もしくは「geboorteverlof」と言われ、パートナーの産休という制度があります。注目すべきは、ここに父親という言葉が使われていないところです。「パートナー」という言葉が使われています。出産は女性に限られたものですが(性別移行をしたFtMの方が出産した場合は、男性が出産ということになりますが)、そのパートナーは男性には限りません。特に同性結婚がすでに可能であり、近年では子供を産み、育てる女性同士のカップルも増えてきているオランダならではの呼び名ではないでしょうか。ちなみにオランダの現状の制度では、パートナーはたったの5日しか産休をもらえません。しかし、2020年7月からは、最大で5週間、またその間給料の70%がパートナーに支払われるようになります。オランダではほとんどのパートナーが出産に立ち会いますし、産休を取得して産まれたばかりの子供と時間を過ごし、出産したパートナーの回復を手伝います。私の妻も、有給休暇を2か月取得して、次女との時間を過ごしたり、私の回復を手伝ってくれています。有給2か月ってなんじゃ!? と思われたかもしれません。オランダでは勤続年数にもよりますが、1年目から20日から24日の有給休暇がもらえます。そしてそれを「使うよう」に奨励されます。私の妻は有給が少し余っていたので、今年の分も追加して2か月取得したわけです。

かくして、苗字が別々のレズビアンカップルは二人の子供を育てることになりました。「苗字が別だと家族の一体感がうんぬん」については、子供たちが大きくなった時に「どう思うかね?」と聞いてみます。同じように、「レズビアンが軽い気持ちで精子提供を受けて子供を産むなんて(子供がかわいそう)」についても、子供たちが大きくなった時に「どう思うかね?」と聞いてみます。いろいろな意見を言う人たちがいますが、親になってこう思う。子供には、成人するまで責任を持って愛情をそそいで育ててあげたい。育てるばかりではなくて、子供に教えられることもたくさんある。いろいろ意見を言ってくれるのもありがたい。しかし私の人生は一度きりなので、自分を信じて決断し、一生懸命やりとげる。

「蘭学」ってご存知ですか? ウィキペディアによると、「江戸時代にオランダを通じて日本に入ってきたヨーロッパの学術・文化・技術の総称」。日本の鎖国は、とうの昔に終わっているはず。人々の暮らしと法律の乖離を埋める国、オランダ。一方で、なぜかそれをしない国、日本。この差はどこにあるのでしょうか? 私にも明確な答えは分かりません。国民性という一言では片づけられない気がします。

下の子が産まれて、はじめての外出で。甘すぎたストロベリーミルクシェイク。

■金 由梨
東京都台東区出身。2009年にエラスムス大学大学院留学のためオランダに移住。
2010年に同性パートナーとワシントンDC(アメリカ)で結婚。現在アムステルダム在住。アムステルダム自由大学大学院にてHRマネージメントを勉強している。3歳になる娘と、5月に出産したばかりの第二子と、二人の子育てに奮闘中! 
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