同性婚に関する違憲審査請求[*4]

 同性間に婚姻を成立させていない民法の合憲性について憲法判断を最初に大法官に求めたのは、2001年、台湾同性婚運動のレジェンド、祁家威であった。祁氏はこのとき結婚届不受理についての違法性を争った行政不服審査、行政訴訟に敗訴し、最終手段として大法官へ憲法解釈を申請したのである。結果は、現行法が具体的に憲法にどのように反しているのかを指摘していないとして、あっけなく門前払いとされた。

 民法が改正されて、2008年から結婚が儀式婚主義(儀式挙行ののち、法院公証処で公証)から戸政事務所での登録制に変わった。祁氏はこれを機に2013年に台北市万華区戸政事務所で結婚届を出そうとするが、またしても受理を拒否される。その後、不受理に対する行政不服審査を経て、台北高等行政法院、最高行政法院での行政訴訟でも敗訴した。最高行政法院2014年9月25日判決(民国103年度判字第521号)では、民法上の結婚当事者は一男一女に限られ、婚姻とは両性の結合により、子どもを産むことを目的とした制度であることが理由とされた。

 そこで祁氏は台湾伴侶権益推動連盟の支援を受けて、2015年8月、大法官に対して2度目の憲法解釈申請を行う。今回はそれまでの婚姻にかんする大法官解釈の趣旨、憲法の各条項に対する精緻な解釈論、諸外国の動向などを踏まえて、詳細な法律論が添えられていた。

 さらに、興味深いことに、2015年11月、祁氏から行政訴訟の被告として訴えられていた台北市政府が、憲法解釈の申請者に加わったのである。民法が同性間に結婚を成立させていないことについて憲法との抵触の有無につき、中央の内政部(総務省)、そして行政院(内閣)を経由して、大法官に解釈申請を行った。台北市は違憲の疑義があるとの立場を表明したが、本件申請を仲立ちした行政院法務部(法務省)からは、むしろ立法者の裁量権を尊重すべき(したがって、違憲ではない)との反対の意見が付されていた。結婚を異性間に限定することは、数千年来の人倫制度、礼俗規範にもとづき、結婚制度が達成しようとする人倫秩序、男女平等、子どもの養育などの社会的機能に合致し、同性間との異なる扱いには正当性があるという理由であった。

[*4]荘嘉強「『公親』或『事主』:従台湾同婚釈憲動員看憲法法庭的社会互動」基礎法学與人権研究通訊21号(2018年)3頁以下参照。

祁家威氏、許秀雯弁護士など。台北高等行政法院の前で。©台湾伴侶権益推動連盟

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